業績悪化で退職金の負担が加重になるため、就業規則を変更して退職金を引き下げるのは何か問題がありますか?

業績悪化で退職金の負担が加重になるため、就業規則を変更して退職金を引き下げるのは何か問題がありますか?

2010.07.01

【ポイント】
就業規則の不利益変更に十分注意する必要があります。

【説明】
退職金の支給を従業員に対して一方的に不利益に変更することは、個々の労働者の同意がない限り、原則的には認められません。

就業規則の変更については、従業員が我慢するだけの特別な必要性があり、合理的なものでなければなりません。会社の一時的な業績悪化等の事情では合理的理由があるとはいえないので注意が必要です。

また、合理性の判断基準の中では、不利益に変更する代償として他の労働条件について有利な変更がされているなどもあげられます。

就業規則の不利益変更について最高裁の判決によると「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきである」が、不利益な変更条項が合理的なものである場合、従業員が反対しても拒否できないとしています。したがって、不利益変更が有効になるにはその変更に「合理性」があるかどうかの判断になります。

その後の最高裁の判決によると、賃金・賞与・退職金等従業員にとって重要な労働条件に関して実質的な不利益を及ぼす場合、「高度の必要性に基づいた合理性」でなければならないとされ、合理性については就業規則変更の「必要性」と労働者の受ける「不利益」のバランス等、次の7つの判断要素 が挙げられました。

  1. 労働者が被る不利益の程度
  2. 変更の必要性の内容・程度
  3.  変更後の内容自体の相当性
  4. 代償措置
  5. 労働組合等との交渉の経緯
  6. 他の労働組合・従業員の対応
  7. 同種事項に関する世間一般的状況等

これらの判例をもとに労働契約法では、合意により労働契約の内容である労働条件を変更できるとし、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより不利益な労働条件の変更はできないと定めています。

ただし、先の7つの判断要素(4つに集約)で、変更が合理的と認められる場合に限り、労働条件の変更ができるとしています。

したがって、退職金規程だけを見直すのではなく、賃金制度や定年制の見直しなど人事制度の変更等、他の規程を見直すときに行うなどして代償措置を含めて総合的にバランスをとれるようにすることが望ましいでしょう。

【関連条文】
■関連法令
労基法第 89条 労働契約法第8条 労働契約法第9条 労働契約法第10条
■関連通達

■関連判例
秋北バス事件(最高裁大 S43.12.25)、第四銀行事件(最高裁2小H9.2.28)、
朝日火災海上事件(最高裁1小H9.3.27)
■関係書式
就業規則

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